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銀幕(中)
みい
2013年6月5日15時38分34秒


うわ、さ、3年越し……。
どーも、こんちゃっす。みいでーっす。
さてさて、構想とかもう完璧に忘れてるけど続き書いてみますw
面白くなったらいいなぁ。


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 ――情けないことに、俺は泣きそうだった。

 きらりと光る岩壁でできた一室には、馬車を使っても絶対に
一度や二度では運び出せない量の金銀財宝に、分厚い書物達があった。
 リナは諸手を挙げて跳ねる様に室内に駆け込み、
その瞬間、大きな岩が頭上から転がり落ち、入り口を塞いだのだった。
 室内は石畳が敷き詰められているようだったし、踏むと作動する
簡易な仕組みのトラップだろう。
 場馴れしているからこそのミスだ。
 ――しかしリナらしくも、
そう思いかけて、リナが平生の状態ではないことに思い到った。
 ガウリイの旦那がした最初の目配せ。そして、ふとした拍子に漏らした、
「俺じゃ役に立たん」の一言。
 そうだ。今日のはしゃぎ様は、以前よりやけに幼い印象を受けた。
 旦那は声を上げて笑うリナを見て、心底安心した様に微笑んでいなかったか。
 出会ってからずっと、リナを一言で表すとしたら「強か」に尽きると思っていた。
 しかし、その強かさが揺らぐ何かが、あったというのだろうか。
 そんな彼女が今、こんなミスをした。
 いつもだったらこんなトラップ、難なく避けているだろう。
 しかし、今は?
 “最悪”が脳裏にちらつき、粟立たない筈の硬い皮膚に焦燥が走った。
 ――リナ。
 頭上に漂わせていた明かりを足元に寄せ、“最悪”の証拠を探す。
 ――大丈夫だ、まさかリナが。
 その想像を打ち消そうと思うのに、彼女の笑顔がチラついて、
余計に不安が煽られている。
 地面の境からは、マントも髪の一房も勿論血の一滴だって覗いてはいない。
 手をひたひたと境目に合わせながら確かめて安堵し、肩の力を抜いたときだった。

「あほかぁぁああああ!」

 小さく、反響して聞き取りづらいが間違いなく彼女の声だ。
 そうだな、確かに阿呆な想像だった。息を吐いて苦笑して、
俺は頭をごつんと大岩に当てた。
 いや待て。俺の想像が、岩の向こうのリナに伝わる訳がないのだから
この突っ込みは俺宛であるはずが無い。
 落ち着け。何をこんなに慌てているんだ。
 リナが、……いくら、大切な仲間だからと言って。
「〜〜わぁぁあああああああ!」
 また、リナが大きな声で何か叫んでいる。
 苦手なナメクジでもいたのだろうか。
「おい、リナ、どうした?」
 岩を叩きながら声をかけども、反応する様子はない。
 彼女の声は聞えているから、中でも脱出の糸口を探しているのだろうか。
 ……いや、中の声はリナだけではない。聞き取りづらいが会話が成されている。
 では一体誰が?
 突っ込みの声は大分親しそうだった。
 誰か、かつての仲間が偶然にもいたというのだろうか。
 アメリアは考えられないだろう。では、俺の知らない誰かだろうか。
 しばらく会っていない間、別の人間と旅を同行していたようだったし。
 ともかく。
 一抹の焦げ臭い感情は見なかった振りをして、大岩に改めて向き合う。
 こんな大岩越しに声が聞えるということは、どこかに穴があるのだろう。
「リナ、おい、聞えるか!?」
 声を掛けながら、大岩にひび割れなどが無いかまず確認し、それから大岩が当たった壁のあたりにほころびが無いか確認する。
 ……待てよ?
 リナも出口を探しているのだろうから、明かりを使っているだろう。
 俺は手元に寄せていた明かりを、先ほど来た通路の方へと押しやった。
 案の定。大岩と壁の間、膝くらいの高さから、明かりが漏れている。
 俺はそこに顔を近づけ、大き目の声で声をかけた。
「リナ、おい、……リナ!」
「ゼルっ、ゼルガディス、聞える?」
 反応はすぐに来た。ほっとしながら、髪を数本引き抜いて穴に差し入れる。
「リナ、ここだ」
 少し振ってやれば、中の明かりを反射して見つけやすくなるだろう。
「ゼロス?」
 声は更に近づいたが、聞えた名前に思わず眉をしかめた。
「リナ? ゼロスがいるのか?」
「ええ、さっき助けてくれたんだけど」
 大岩に潰されないように、だろう。
 どうせその後おちゃらけて、リナに突っ込まれていたんだろうが。
 しかしどんなに阿呆なことをしていたとしても、相手は高位魔族だ。
「……で、あんたは一体何のために?」
 問うリナの声色も、幾分かかたくなっていた。
「リナさんの様子を見に、ですね」
 ゼロスの声は聞き取りづらい。リナと離れているのか。
「何のためにか、訊いてるのよ」
「心当たりがないわけじゃあないでしょう? リナさん。
 なんたって、この世界だけじゃなく異界の王の血まで
その身に溶けているんですから」
 少しずつ大きくなるゼロスの声。しかしそこは問題ではない。
「何だと……?」
 異界の王の血? 王の血、とゼロスが言うのだからこの場合は
魔王の――つまり賢者の石のことだろう。
 リナが賢者の石を手にしていたのはいい。だが、何のために飲んだんだ?
 待てよ、異界の王? リナはそんな呪文を使っていなかったか。
 ……四界の闇を統べる王、我と汝の縁に従い、我に更なる力を与えよ?
 呪符! ゼロスから買い取ったと言っていたあの4つの呪符が、
それぞれ魔血玉だったのか……。
 リナが、その賢者の石を飲むほどの窮地に、陥ったのだろうか。
 ガウリイが呟いた「役に立たん」の一言は、その時のことか?
 二人の会話は続いている。焦るリナの声に、楽しそうに返すゼロス。
「人間にあるまじき、強大な魔力ってところかしら?」
「ええ。かつて冥王が考えていたアレを、今度は完璧に実行できる可能性があります」
「おい、まさか……!」
 リナに、混沌を召還させるわけにはいかない。
「まあ、まだそんな命令は受けてないんですけど。
 やっぱり僕ら魔族としては、強大な力と認めざるを得ないんですよねぇ。
 欠片とはいえ、2回も魔王様を倒した存在っていうのは」
「馬鹿な、2回、だと……?」
 ちょっと待て、どういうことだ。
 1度ならば、それは俺も一緒にいたあの時だろう。出会ってすぐの、レゾの件だ。
 その後に、もう一度、魔王の欠片を倒したというのだろうか。
 ――だから、賢者の石を飲み込んだ?
「だから、監視してるの?」
「ええ。そして、その時になるまでは生きていて頂きます。
 ……とはいえ、こちらも大痛手なんですよね。
 この間の一件で、魔族間での諍いなんて下らないものもありましたし。
 今まともに動けるのは、獣王様と海王様のみ。
 一度冥王が失敗した策を持ち出してくるには、準備が整いません」
 何故だ。
 魔竜王と冥王は確かに滅びたが、覇王はどうした?
「そうね、一番策を弄すのが得意だったのが冥王だったんだっけ?」
 こともなげに頷くリナは、覇王の顛末も知っているのだろうか。
「獣王様も不得意ではないんですけどね。
 ともかく、今すぐっていう動きはないと思いますよ。でも」
「ひぅっ」
「どうした!?」
 ――小さな悲鳴は、年相応に可愛らしかった。
 思考が横に逸れて、頭を振る。リナが対峙しているのは、高位魔族だ。
「個人的には、今のリナさんにとっても興味があります」
 先程の悲鳴と相俟って、まるで男女の睦言のように聞えてしまう。
 そんなわけはない。そんなこと、あるはずが無いのに。
「前回は、はっきり敵対してでしたけど、今回は仲間との対決でしたものね。
 リナさんがルーク・シャブラニグドゥ様の正体を知った瞬間、是非その場に
居合わせたかった。
 今よりももっと複雑で美味しい負の感情を出されてたんでしょう?」
 仲間? リナと行動を共にしていた“ルーク”という男が、
シャブラニグドゥとして目覚めたというのだろうか。
 離れている間に一体何が……くそ、こんなことなら離れなければよかった。
 手を付いていた大岩を殴ろうとし、その向こうにリナがいることに気付く。
 どうして俺はじっと耳をそばだてているんだ。
 この大岩をどけるのが先だろう!
「地精道(ベフィス・ブリング)っ!」
 大岩をがりがりと削っていく。しかし、穴は開かない。
 何度試しても術は突き抜けず、大岩がただ薄くなっていくのみだ。
「僕が怖いですか、リナさん。
 案外今のリナさんに揺さぶりをかけたら、世界を滅ぼすのも簡単かも
しれませんね。
 自覚なさってますか? 今、ガタガタ震えてらっしゃいますよ」
 ゼロスの楽しそうな声が聞えて、ぐっと強く拳を握る。
 貫通しなくても、薄くすればそれだけ望みは広がる。
 もう一度、地精道!
「ああ、いいですね。美味しいです」
 ――ああもう、どうして言いなりになっているんだ!
「リナ、どうした!?
 おい、ゼロス! お前リナに何をっ!」
 岩はほとんど消え、術を阻んだ金属越しに、二人の影が見えていた。
 そう、二人の影はほとんど重なっている。
 こんな至近距離で一体何をしているんだ!
「僕ですか? リナさんに何を? ……うーん、そうですねぇ。
 襲ってます」
「ふざけるなぁぁあああ!!」
 思わず剣に手が伸び、思い直す。
 目の前の金属は、どうせオリハルコンだろう。柔らかい金属とは言え、
剣とは相性がよろしくない。
「嫌ですねぇ、ふざけてなんていませんよ。
 では言葉を変えましょうか。
 ねちねち言葉攻めしてリナさんの美味しい感情で食事してます。
 いいじゃないですか、負の感情くらい。リナさんだって無抵抗ですよ?」
 無抵抗、だと!?
「リナ、どうしたんだ! 何かされてるのか!?」
「いいえ、僕は何もしてません。」
 何でゼロスが答えるんだ!
「そもそもゼルガディスさん。こちらの室内がこんなにも明るいんですから、
影がそちらから見えるでしょう?」
 見えているからこそ、もどかしい。どうしてリナは動かない?
「リナ、おい、しっかりしろ!」
「でもリナさん、しっかりしろだなんてよくそんな無責任なことが言えた
もんだと思いません?
 ゼルガディスさんはルーク様を知らない。
 覇王様との戦いも、ルーク様との戦いも知らない。
 いいえ、ガウリイさんだって本当は知らないんですよね。
 北の魔王様から伺いましたよ。
 ルーク様を最後に屠った時、ガウリイさんは倒れていて、あなた一人だったと」
「あ……」
 リナがぴくりと身じろぎをした。
 ちょっと待て。その口ぶりじゃ、――
「あなたが、かつて仲間だったルーク様を、」
「やめろぉぉぉおおおおおおお!!!!」
 剣を鞘ごと、目の前の銀幕に叩き付けた。
 ゼロスの言葉を掻き消したくて。
「魔王様と同化されたルーク様を、殺したんですよね、リナさん」

 やめろ。
 リナの心はもう
 こんなにも、傷ついているじゃないか。




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はい、上編があまりにも解りづらかったので、ゼルサイドからもう一度。
ゼルやんはまだ、リナちゃんに対する心をはっきりと自覚しては
いなかったみたいですね。
だからテンパるテンパるw
テンポが悪くて読みづらいですが、次はどうにかなるはずっ!
今しばらくお付き合い下さいませ。
みいでした☆
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親記事: 銀幕(上)-投稿者:みい
コメント: なし

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