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きらりと、光る。 1 (ゼロリナ)
みい
2013年6月8日17時57分46秒


こんちゃー。みいでっす。
過去ログを漁っていてふと気付きました。
私がこちらにお世話になるようになってから、もう10年も経っているんですね。
昔書いた私のss達は幼くてむず痒く、「偶然」に至っては色んな意味で
怖くて読み返せないです(苦笑

今の私はといえば、中学も高校も卒業し、ラノベ作家を目指して某学院の
ノベルス科に通い、卒業するも道には挫折、結局フリーター、と。
そこそこ幸せな毎日を送っています。
まだ苗字は変わっていませんが、薬指にはきらりと光る大切な“証”もあります。
スレイ原作が手元に無くて、色々とあやふやですが……
今の私が書ける、穏やかな物語をお届けしたいと思います。


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 きらりと、光る。



 人間でありながら、魔族を好いているというのは、やはり異端なのだと思う。
 生きとし生けるものの敵。そう捉えられている彼ら。
 多くの人の目に触れる魔族と言えばレッサーデーモン等の亜魔族だし、
仕方が無いことなのだけど。
 むしろ、高位魔族と何度も対峙しているという事実の方が、既に、よっぽど、
人間としては異端なのかもしれない。
「ねえ、ゼロス」
 虚空に問いかけても返事はない。
 なぁんだ、今日は近くにいないのか。
 ――いや、この場合「近く」という表現は妥当ではないのかもしれない。
 彼の所属は精神世界面であり、文字通りこちら側とは次元が違う。
 あたしが何の気なしに掛けた声を、彼はどうやって拾っているのだろうか。
 “気まぐれ”という言葉が、一番しっくりくる。
 きっと、呼びかけは全部聞えているのだろう。でなければ、呼んですぐに
姿を見せるなんて芸当、そう何度も見せてくれはしないはずだ。
 そして、毎度必ず姿を見せてくれる程、心は近くにはないのだろう。
 ……おや。「近くにいない」を否定していたはずなのに、結論は肯定か。
 さくさくと草を踏み締めながら、何でもない言葉遊びを脳内で続ける。
 時刻は夕暮れ、逢魔が時。
 そして、場所は森の中の街道から脇に逸れた獣道。
 何かの気配に一本だけ炎の矢を仕掛けるつもりで小さく唱え、
――すぐに打ち消し烈閃槍(エルメキア・ランス)を口の中で転がす。
 破壊神だのと言われるあたしだって、無闇に山火事を起こしたい訳ではないのだ。
 低く唸りながら近付いて来るデーモンは、ひぃふぅみぃ、よぉ……っておいおい。
 こちらを囲むように、ざっと15体くらいか。全方位からの包囲ではないので、
逃げやすいように一部に的を絞って光の槍を放つ。
 街道までは今来た獣道をしばらく戻らなければならないので、予定通り
獣道を走る。
 すぐに完成した翔封界(レイ・ウィング)で炎の矢を避けつつ獣道を奔り、
ほどなくして当初の目的地である洞窟へと到着した。
「ゼロス! ゼーロース!!」
 呼べど喚けど、やはり出てこない。
 ここに写本がある、とあたしに伝えたのは他でもないあいつだ。
 そして、彼があたしにそれを見られてもいいと判断したのなら、その写本の
内容は十中八九金色の魔王についてだろう。
 何たってあたしは一度、異界黙示録そのものに触れて、それについての知識
を得ている。そして、魔族はあたしが混沌についての知識を増やすことを歓迎
しているのだろう。
 しかし。
 ふ、と空気が重くなった。辺りの気温が下がった気がする。
 決して夕暮れのせいではない。
 瘴気。こんなに強い瘴気を出せるのは、亜魔族ではあり得ない。
 やはり、一本の木の向こうから、ゆっくりと魔族が姿を現した。
 人のような形をとっているが、バランスが妙である。
 頭と胴体のバランスだけ見れば、まるで子供のようだ。しかし、腕が極端に
短く、脚は長すぎる。
 純魔族としての力の強さは中の下、といったところか。
「お前、人間。我の姿を、見て、何故、恐怖しない」
 問われて少し噴出してしまった。確かに、緊張はするが怖いとは思わない。
「残念ながら、あんたよりもっと高位の人型魔族と何度もやりあってるのよね」
 これは良くない慣れなのかも知れないが。
「しっかし、こんなとこでそこそこ力のある魔族が何してんの」
「お前には、関係、ない」
 ふむ。まあ、最初からストレートに教えてくれるとは思ってなかったけど。
「えー? 仮にも人型取れる純魔族様が、たかだか人間の小娘一人に
秘密にしなきゃいけないことなんてあるの?」
「秘密にした、わけでは、ない」
 ほーらね。案外簡単なのだ。低級魔族との腹の探り合いは。
 奴らの自尊心をほんの少しくすぐってやればいい。
「じゃあ何なのよ」
「その先の、本が。人間の手に、渡せない。守る」
 ……守る、と来たか。
「ちなみに、あたしがはいそーですかってここで帰ろうとしたら、見逃して
くれるの?」
「食事は、認められている」
 なるほど。上司の命令を受けてここにいて、近づいた人間は奴専用の
お食事としてなぶられて殺されるわけか。
 ――四界の闇を統べる王
   汝の欠片の縁に従い
   我に更なる力を与えよ
 剣を抜き構えながら、早口で魔力許容量をまず増幅する。
 魔血玉を口にしたあの時以来、身振りはいらなくなった。
 ――凍れる森の奥深く 荒ぶるものを統べるもの
   滅びをいざなう汝の牙で 我らが前を塞ぎしものに
   我と汝が力もて 滅びと報いを与えんことを
 飛び来る光球を避けながら距離を取り、
「獣王牙躁弾(ゼラス・プリッド)!」
力ある言葉で光の帯を解き放つ!
 その切っ先は迷うことなく目の前の魔族に向かい、
「おっと」
そのたった一声と間に割って入った杖の一振りで、胡散霧消してしまった。
 魔族の前に唐突に現れた見慣れた杓杖。
「すみませんね、リナさん。少々遅くなってしまいました」
 そして、聞きなれた声。
「ゼロス……あんたねぇ」
 あたしが呆れた声を出すのと、彼が姿を現したのは同時だった。
 最初から全身現しておけばいいものを……やはり変なところで演出好きだ。
「ゼロス様、何故」
「ああ、あなたは下がっていなさい。取るに足らない低級魔族といえど、
全体が減ってしまった今は一体でも惜しいんです。
 ――こちらは、あなた程度じゃ到底太刀打ちできませんよ」
 心なしかダメージを受けたように一瞬姿がブレ、魔族は何も言わず消えていった。
「随分買いかぶってくれるじゃない」
「はっはっは、ご謙遜を。魔王様を二度も混沌へ送った貴女が何を言うんですか」
 そう言いながらも、口元はいつもの仮面よりも深く笑みを刻んでいる。
 買いかぶった表現をしたのはわざとなのだろう。
「……で? わざわざ守らせていた写本を、あたしには見せてくれるのよね?」
「さあ、それはどうでしょうね」
「はぁ? じゃあ何でここの話をあたしにしたのよ」
「それはまあ、色々とありまして」
「大体呼んでもすぐ来ないし」
「リナさんの呼び声は聞えていたんですけどね。こちらにも、お仕事があったので」
「ふぅん」
 面白くない、と顔に書いて見せ付けてやると、ゼロスは苦笑して洞窟へと
一歩踏み出した。
「取り敢えず、ご案内しますよ」


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穏、やか……?
ええっとすみません、ゼロスさんほとんど出てきてないっていうw
もうちょっと続きます!
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