1.新規記事を投稿
2.コメントを投稿
3.戻る

ドラスレ! 11
とーる
http://blacktail.blog.shinobi.jp/
2010年5月13日22時48分40秒


 




第十一話





「……どうしたの? これは」

「ちょっとした術をね、かけさせていただきました」


ガウリイお嬢ちゃんの戸惑いに答えたのは、俺ではなかった。


「どちらに非があるのかは別の話として、昼間の街道で騒ぐのは
 他の旅人に迷惑ですよ」


一人の僧侶がそこにいた。
いつのまにやってきたのか、トロルたちの向こう側――
茂みの方に静かに佇んでいる。
慈愛の漂う白い顔からは、年齢や性別が分からない。
若いようにも、年老いているようにも、男にも女にも見える。
ただ一つ俺たちに分かるのは、固く閉ざされているその双眸には、
どうも光がなさそうだということ。
しかし一番特異なのはその服装――変哲もない僧侶の服装は、
見事に赤い色で統一されている。
それも爽やかな赤ではなく、毒々しい赤。
暗い所では、血の色にさえ見えるかもしれない。


「ありがとうございます。助かりました!」

「……あなたは?」

「いえ――ただの旅人ですけどね。不審な連中――こいつらが
 貴方たちの跡をつけて街道へ入っていくのを見かけたもので、
 つい首を突っこんでしまったのですが」

「――リナみたいな性格してるわね」


茶々を入れてくるガウリイお嬢ちゃんの言葉を、俺は黙殺した。
一応、ここはシリアスシーンだ。


「この周辺に人払いの魔法をかけたのも?」

「ほう……分かりましたか」


感心したように言う僧侶。
これくらいのことで、俺をなめてもらっては困る。


「あなたも言ったでしょう。昼間の街道だと。これだけドタバタやっても
 街の警備でさえ誰もやってこないっていうことは、そういうこと
 なんでしょう」

「無関係の人間に大勢出てこられて騒がれるのは、面倒ですからね」

「……この件に、あなたも関わりがあると?」


僧侶がパチンと指を鳴らすと、それを合図にロディマスたちや
トロルの群れは、まるで操られるかのように、ゾロゾロと
茂みの方に向かって行進を始める。
その姿が見えなくなった所で、僧侶は口を開いた。


「見たところ、あの連中……ゼルガディスの手のもののようですね」

「ゼルガディス……?」


初めて聞く名前に眉をひそめる。
ゼルガディス――。
それがロディマスたちの “上” にいる奴の名前だろうか。


「ええ。貴方の持つあるものを使って魔王シャブラニクドゥを
 復活させようとしている者――私の敵です」

「魔王シャブラニクドゥ!?」

「し……しゃら……?」


さあ、とんでもないことになってきた。
眉をひそめて黙りこむ俺、目を大きく見開くアメリアとは対照的に、
目を瞬かせてきょとんと首を傾げるガウリイお嬢ちゃん。

「本当か? それは」

「まず間違いありません。ゼルガディスとは人とゴーレム、
 ブロウ・デーモンのキメラとして生を受けた存在です。
 魔王を復活させることによって、より強大な力を手に入れて
 世界を混沌の渦に落としいれようとしているようです」

「何でそんなバカなことを……」


僧侶は哀しげな笑みで首を振る。


「そこまでは……けれど確かなのは、ゼルガディスは貴方たちと
 私の共通の敵である、ということです」


ふーむ……。
いきなり話が進んで大きくなった上、共通の敵とか言われてもな。
そもそも、何でこの僧侶はそんな奴を敵に回したのか。
この僧侶からだと “見過ごせない” という普通の答えで済まされそうだ。
こういった善人はどーも……。


「ふむ……つまり、俺たちに『一緒に戦え』と」

「いえいえ、とんでもない」


僧侶は慌てて首を振り、言葉を続ける。


「察するに貴方たちは、そうとは知らずに “鍵” を手に入れ、
 巻き込まれてしまった――そんなところでしょう」

「まあ、な」

「それでは、私が “鍵” をあずかりましょう。それで貴方たちも、
 つまらぬことに巻き込まれなくなります」

「そんなの駄目です! 一人で戦うことになるじゃありませんか!」


それなら“鍵” など壊してしまえばいい。
そう俺が言おうとしたら、その前にアメリアが憤慨するように叫んだ。
正義おたくのアメリアにとって、さすがに承諾しかねるようだ。


「ご心配なく。この赤法師、決して奴らにひけを取るつもりは
 ありません」

「――赤法師……?」


俺は思わず問い返した。
赤法師って、まさか。





NEXT.
2.コメントを投稿
親記事: ドラスレ! 8-投稿者:とーる
コメント: なし

3.ツリー表示
4.番号順表示