TERROR [i]

1.KAKINAGURI i
2.怪談

くれつきさんの話

 ある人たちが田舎で久しぶりに同窓会を開いた。
 夜もふけて、同窓会もお開きになって、各自家にもどる事になった。
 そのうち、6人が同じ方向に帰ることになり、田舎の暗い道を話ながら歩いていた。

 ふと、話が昔自分達がいじめていた男の子、仮にA君として、の話題に移った。
 A君は同窓会には出席しておらず、では、これからそのA君の家に行こうか、と、酒が入って酔っ払ったその6人は考え出した。

 その前に、少し肝試しをしようか、と、誰がが言い出し、酔った勢いで6人は近くの共同墓地で肝試しをすることにした。
 肝試しの内容はいたって簡単で、墓地の奥にある慰霊碑まで行って帰ってくること。
 だけど、一人ずつ行ったら本当に慰霊碑までその人が行ったかずるをしたか分からない。
 そこで、丁度近くに落ちていたダンボール、これを最初の一人目が慰霊碑まで持っていって二人目が持ってかえる。三人目がまた持っていって四人目が持ってかえる。と、繰り返せば良い、ということになって、じゃあそうしようと決まった。
 しかし、ダンボールは結構軽く、風で飛ばされるかもしれない。と、言うことでその中に石を入れて運ぼうと言うことになった。
 6人は手近に拾った石に勝手にAと命名し、ダンボールにいれて肝試しを開始した。


 まず、一人目が慰霊碑に行き、その前にダンボールを置いて帰ってきた。
 そして、2人目が慰霊碑に向かって歩き始めた。ところが慰霊碑に着いたのに、肝心のダンボールがない。
 さては一人目がズルをしたな、と思いながら2人目は皆のいるところに向かって歩き出した。
 すると、どこからか
「こんばんは〜、こんばんは〜」
 と、声がする。
 2人目が慌てて回りをみるけれど、誰も居ない。なんだ、空耳か、と思ってまた歩き出すと
「こんばんは〜、こんばんは〜」
 と、何処からともなく声がする。
 怖くなって走り出すと、いきなり何かに足をとられて二人目は転んでしまった。
 何だ?と、足元をみると、それは例のダンボールであった。

 2人目はそのダンボールをもつと、皆の所にいって、一人目に文句を言った。「おまえ、 怖くてズルをしただろう?慰霊碑の前に、ダンボールはなかったぞ。おかげで私はこのダンボールに躓いてしまったじゃないか。」
 ところが一人目は確かにダンボールを慰霊碑まで持っていったという。
 まぁ、これ以上追求しても仕方なく、三人目が改めてダンボールを持って慰霊碑まで行くことになった。
 ところが、ダンボールの色が、何時の間にか赤色になっている。
「あれ?色が変わったぞ?」と、誰かが言ったが、三人目の人物はいいや、最初からダンボールは赤だった、という。
 そしてそのままダンボールを持って、慰霊碑まで行って帰ってきた。


 四人目はさすがに怖くなってきていたが、ここで自分が逃げることは出来ず、仕方なしに慰霊碑に向かって歩き出した。
 ダンボールは確かに慰霊碑の前にあった。四人目はやっぱり今までのことは酔ったせいだ、と
 思ってダンボールを持つと歩き始めた。
 ところが、歩き始めると、「こっちだよ、こっちだよ」と、声が聞こえてくる。
 空耳かと思ったが、確かに何処からか「こっちだよ、こっちだよ」と、声がする。
 怖くなって四人目は走り出し、皆のところに帰ってきた。すると、ダンボールの色が今度は白に変わっている。
「白い色に変わっている!」と、誰かが言ったが、五人目は「いいや、最初から白い色だった」と言って、慰霊碑にそのダンボールを持って行ってしまった。


 五人目が帰ってくると、さすがに怖さはあったが6人目が慰霊碑に向かっていくことになった。
 ダンボールは白い色のまま、慰霊碑の前にちょこんと置いてあった。
 六人目は、やっぱり今までのことは酔いのせいだ、と、思ってダンボールに近づいていった。
 ところが持ち上げようとしてもダンボールが持ちあがらない。
 そのうえ、また何処かから「ここだよ、おいで、おいでよ」と、声がする。
 さすがに酔いもとんで、それでもダンボールを持ち上げようとして六人目が焦り出した。そして、焦った拍子にダンボールのふたが開いた。
 そのなかには、Aと命名した石が、Aの顔でじっとこちらを見ていたという・・・

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