TERROR [i]

1.KAKINAGURI i
2.怪談

猫さんの話

 私、今は引っ越しして、借家にすんでるんですけど、前は持ち家だったんですね。(もちろん家族で)
 その時は私、弟と同じ部屋使ってたんですけど

 ある夜なかなか寝付かれなかったんです。目が冴えて・・・ってわけじゃないんですけど。
 で、ボケボケと、寝返りを打ちつつ起きていたんです。そうしたら、下から階段昇ってくる音がしたんです。あ、部屋二階にあったんです。
 こう、スリッパで、つま先立ちでぱたぱたと。それで、私は母が様子を見に来たのかしら、と思ったんですけど、それで音がしなくなったんですね。
 私、空耳かと思って、その日は寝ましたの。


 そうしてそんなことも忘れてしまった頃、私、基本的に寝付き悪いんで、良く夜更かしするんですけど、また寝ないで居た夜があって、そうしたら、また、音がいたしました。
 家、階段十三段あるんですけど、その聞き慣れた分のタイミングで、階段が鳴ったんです。家でスリッパは居てるの、母だけなので、母がきたのかしら?と思いましたら、やっぱりそれで音がしなくなったんです。
「お母さん?」
 と声を掛けましたけれど返事はございませんでした。
 もしかしたら、お隣の音が、夜は静かだから変に響いたのかもと思いまして、その日は寝ましたの。

 そうしているうちに、ある朝、弟が私にこう聞いてきました。
「姉ちゃん、便所近い。」
私自慢にはなりませんけど、遠いんです。私じゃない。と答えましたら、弟は、
「え?じゃあ昨日階段上り下りしてたの誰?」
 私の空耳じゃございませんでしたのです。弟は、二段ベットの上で寝ていたので、てっきり私が移動する音だと、「毎晩」そう思って音を聞いていたのです。


 そしてある夜、私が弟と、話をしながら起きていると突然、「階段を駆け上がって」来る音が、そして部屋の前まで歩いてくる足音がして・・・、
 鍵のかかっているはずのドアが「バン!!」と音をたてて開きました。そしてそのドアの向こうには、何にも、居なかったのです。ただ、なま暖かい風がふうっ、と部屋を通り抜けていきました。
 どうでしょう。その風にあたったとき、心臓が、握りつぶされるような感じがしたと弟は次の日言いました。

 ああ、後日談というか。その日から弟が、ベッドの下の段で寝たいと言い出しました。

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